理事長挨拶
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第16代 日本マイクロサージャリー学会 理事長
公益社団法人日本海員掖済会大阪掖済会病院 上席副院長、手外科外傷マイクロサージャリーセンター /静岡理工科大学手外科微小外科先端医工学 五谷寛之
この度第16代、日本マイクロサージャリー学会理事長を拝命しました五谷寛之と申します。光栄であるとともに大変な重責を感じております。
さて本会は昨年50周年の記念すべき年を迎え、櫻井前理事長、亀井会長のもと記念式典が行われました。
皆様がよくご存知の通り、本邦におけるマイクロサージャリーの歴史は、1965年に奈良県立医科大学で玉井進名誉教授が、世界で初めて顕微鏡下に母指再接着を成功されたことに始まり、1974年に第1回日本マイクロサージャリー研究会が開催されるに至っています。国際的にも日本のマイクロサージャリー技術は高く評価されており、波利井清紀会長の下1988年に第8回 International Society for Reconstructive Microsurgery (ISRM)、玉井進会長の下1994年に第12回International Microsurgical Society (IMS)が我が国で開催されました。2009年には両学会が発展した第5回World Society for Reconstructive Microsurgery (WSRM)(土井一輝・光嶋勲会長)が沖縄で開催されました。
最近では2021年に、コロナ禍の中Asian Pacific Federation for Reconstructive Microsurgery(APFSRM)が柿木会長のもと、第48回日本マイクロサージャリ学会学術集会(関堂充会長)とともに筑波で開催されました。
そして、名誉会員の土井一輝先生が2023年American Society for Reconstructive MicrosurgeryのHarry J. Buncke Lecturerに選ばれました。再建マイクロサージェリー分野における「ノーベル賞」に相当する本賞として認められましたことは日本マイクロサージャリー学会にとっても大変名誉なことでありました。
現在、一般社団法人日本マイクロサージャリー学会は、マイクロサージャリーを行なう主に整形外科医,形成外科医によって構成され,会員数は約1500名あまりです。
まさに先人の弛まぬ努力の積み重ねのお陰でその歴史を紡いできたと言えましょう。
サー・アイザックニュートン卿の言葉である(If I have seen further it is by standing on the shoulders of giants.)を体現している学会であると言えます。
そして、その両肩を構成しているのが整形外科と形成外科なのではないでしょうか?
四肢外傷の再建、手外科領域のマイクロサージャリー技術を用いた再建は共通した基盤にあたります。そして、その領域において画像診断技術の向上により臨床解剖がより明確になり、足趾からの組織移植も短茎を利用し、短時間で行うことが可能な手術になってきました。また、指尖部再接着から始まったスーパーマイクロサージャリー技術の発展は、perforator flapとよばれる侵襲の少ないflapの開発に応用され、外傷以外にも悪性腫瘍切除後の四肢や頭頸部の再建に利用され、いまやリンパ管を扱う手術領域に新たなフロンティアを創設してきております。さらに工学的な技術との連携により近年学会でも毎年の様にシンポジウムが行われるロボティックマイクロサージャリー、そして人工神経の基礎的開発、臨床応用も注目すべき夢のある分野です。これらが先人により開発されてきたマイクロサージャリー技術と融合していく未来がそこにあり、細胞工学や骨軟部組織延長技術など他分野との融合技術もその輪の中に入ろうとしています。
一方この様な臨床技術の発展の陰には“ものづくり日本”に表される地道な企業群の支えがあります。私たちはそこにも目を向けて感謝すべきと思われます。
また社会保険制度と私たちの技術に対する評価についても今後慎重に議論していかなくてはなりません。この様な問題に対する学会としての方向性は会員の先生方と十分に論議を尽くすことが重要です。
夢を語ると共に、習得するのに困難とされる技術を若手医師へ伝承する方策の検討など現実的な諸問題を解決する為には、各理事、委員長をはじめとする会員各位のご支援、ご指導が不可欠です。そして学会を60、100周年へと向けて持続的発展を可能とする基盤を先生方と形作っていくことが私の責務と考えています。
何卒学会運営へのご協力をよろしくお願いいたします。
2024年6月12日